健康管理

肥満・生活習慣病予防と疼痛治療

肥満による疼痛と生活習慣病

肥満が様々な疼痛、運動器疾患、生活習慣病に与える影響が大きく、鍼灸マッサージの効果は、肥満を改善し、生活習慣病や慢性疾患の予防対策になります。

肥満が人体に与える影響

肥満は循環器系疾患、心血管系疾患、糖尿病、腎疾患、がんなどの生活習慣病、腰痛、膝痛などの運動器疼痛疾患病、頚部痛、頭痛などの慢性疾患病の発症リスクとなり、仕事の効率や、家事の効率低下など、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく低下させます。 肥満によって引き起こされるこれらの痛みの発症と重傷化は、体重増による筋肉、骨格系の運動負荷の増大が影響しています。 また、神経の障害による神経性疼痛でも肥満によって重傷化リスクが大きくなります。

肥満と疼痛の関係

日本人の食事による摂取エネルギー量は年々、低下していますが、肥満者(BMI 25kg/㎡以上)の割合は、平成三〇年度の国民調査によると、男性が32.2%、女性が21.9%で減っていません。これは年々、運動不足による消費エネルギーが減っていることや、基礎代謝による代謝量が減っていることが考えられます。また、肥満は、抑うつや認知症機能障害などの中枢神経障害、末梢神経性疾患(手足のしびれや運動障害)の大きな原因となっています。 特に肥満の人(BMI 25kg/㎡以上)は、神経性疼痛の痛みの度合いが高いと感じているデータも、東京大学医学部付属病院疼痛ケア診療部のデータとしてあります。 これは肥満の方や相撲の力士などの方が、とても痛みに弱いことと整合性が一致します。 肥満は関節痛などの運動器疼痛疾患病、帯状疱疹後など神経障害性疼痛、糖尿病による糖尿病性ニューロパシーにも悪影響を与えています。

肥満と神経障害性疼痛の関係

近年、肥満は体重増による身体への力学的負荷(運動器障害、変性、炎症、神経炎症)を与えることだけではなく、脂肪細胞が分泌するアディポカイン(脂肪細胞から産生・分泌されるさまざまな生理活性物質の総称)に影響を与えることが分かっています。肥満になることで、アディポカインのうち、レプチン、レジスチンは上昇し、アディポネクチンは低下します。このことで運動器や神経系の代謝機能に影響を与えます。また、肥満はレブチン、レジスチンなどを通じた神経障害性疼痛の発症原因として神経炎症を起こすことも分かっています。 肥満に関連するアディポカインのひとつであるレプチンは、脂肪細胞から分泌され、視床下部の受容体を介して、摂食抑制やエネルギー消費亢進をもたらすことにより、通常は肥満の予防(抗肥満)に働きます。 しかし、肥満の方ではレプチンが分泌されても、脳においてレプチンの作用が発揮されない状態となっており、血中レプチン濃度は、体脂肪量に比例して上昇してしまいます。 この脂肪細胞から分泌されたレプチンは、脂肪組織に集まっていき、マクロファージを活性化し、炎症性メディエーターを増加させ、末梢神経の過敏化、末梢感作(弱い刺激でも強い痛みに感じてしまう痛覚過敏)を引き起します。 末梢神経が感作された状態により、脊髄に入力される過剰な痛みのシグナルが脊髄のグリア細胞を活性化させることにより、増幅し、さらに脊髄が感作される結果、脊髄でも異常な神経興奮が起こる中枢感作が形成されます。 このような末梢神経と中枢神経系における感作により、神経障害性疼痛が発症、増悪すると考えられています。 さらに脳腸相関の悪循環によるストレス増加が、暴飲暴食につながります。このとこにより肥満度が増し、神経性疼痛などの慢性疼痛が増加する負のスパイラルに陥ります。また、生活習慣病も悪化することになります。

生活習慣病の予防が重要

生活習慣病や慢性疼痛の発症予防や治療には、患者ご自身が取り組むセルフマネジメントが重要だと、よく言われます。特に運動習慣は生活習慣病と、肥満の予防・改善のために必須です。 しかしながら、痛みは日常生活を制限し、運動習慣等の阻害阻止となるため、健康全般への悪影響が非常に大きくなることから、一度、生活習慣病や慢性疼痛になると、セルフマネジメントのみでの改善は難しいと言えます。 WHOでも慢性疼痛を疾患の一つとして扱うことにし、世界に向けて疼痛対策の強化、生活習慣病の予防を喚起しています。

生活習慣病の予防としての鍼灸・マッサージ

鍼灸治療は、神経、脳、腸、ホルモンなどへ働きかけが可能であり、血液・水分・ホルモンなどのバランスを整え、基礎代謝を上げる効果があります。またマッサージには同様に運動器へ直接、働きかけることにより基礎代謝を上げるほか、痩身効果があります。 痛みは脳で経験する不快な感覚であり、情動体験と言えます。鍼灸にはこの痛みを和らげる緩和効果もあります。 鍼灸・マッサージを日常に取り入れることは、肥満と疼痛どちらにもアプローチすることが可能で、生活習慣病予防対策やQOLのさらなる改善に結びつきます。疼痛対策で痛みが改善した次には、運動習慣や食事療法に取り組むセルフマネジメントが実現できるようになります。

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